Executive Summary
- 国際的な情勢、欧米のトップ企業の動向を見ると、日本においてもリテール業界のカーボンニュートラルへの本格的なコミットメントが必要になると考えられる
- 気候変動課題へのリテール業界の影響範囲は広く、日本の電力消費の約8.2%、温室効果ガス排出の約16.0%〜32.1%にあたる可能性があり、リテール業界の取り組みなしに日本のカーボンニュートラルを実現することは難しい
- マイルストーンとして設定される2030年まであと7年、2040年まであと17年と迫っており、事業構造の抜本的なシフトには時間の余裕がない
- カーボンニュートラル実現には、エネルギー、製造・調達、物流など広範にわたる積極的な取り組みが必要であり、経営トップの信念も欠かせない
- サプライチェーン温室効果ガス排出量をゼロにしながらの事業継続・成長が求められる時代を想定し、経営や業界の持続可能性を「利益 ÷ 炭素排出量」を中心指標に考えるのはどうか
本ホワイトペーパーを制作したハルモニア株式会社は、リテール企業とパートナーシップを組み、食品ロス削減、価格設定、消費者の行動変容促進によるカーボンニュートラルと気候変動緩和を目指している。
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💡 本資料における用語の定義
- リテール業界:消費者の手に届く商品のサプライチェーン全体、製造・物流・卸売・小売業全般
- カーボンニュートラル:日本が2050年までの実現を宣言している、温室効果ガス排出が差し引きゼロの状態。ネットゼロ、脱炭素、ゼロカーボンなど様々な表現がされる
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Ⅰ.リテール業界の気候変動対応・カーボンニュートラルはグローバルでは最注目の課題となっている
1. グローバル課題解決のための取り決めはリテール業界にも大きな影響をもたらしはじめている 🇺🇳
- 2015年の国連サミットにおいて採択されたSDGs(Sustainable Development Goals)においても、以下例のようにリテール業界が関連する目標が設定されている
- グローバル課題のなかでも、気候変動対策(≒温室効果ガス削減)は国際的にも重要な取り組みとして位置づけられている
2. 気候変動課題におけるリテール業界の影響範囲は日本においても広く、多くの人々のライフスタイルに関わっている 🇯🇵
観点1:エネルギーベース
- 経済産業省資源エネルギー庁「総合エネルギー統計」によれば、小売業は日本全体の電力消費のうち約8.2%を占めている(ガス・灯油等、電力以外のエネルギーは除く)
- 例えば、後述するイオン株式会社は日本の電力の約1%を消費